いろいろ

住宅ローンにおける督促の法律的な意味

住宅ローンの返済を滞納してしまうと、やがて督促状が送付されてくることになります。住宅ローンを滞納した場合の督促は、通常、抵当権が設定されているために裁判外の督促となり、簡易裁判所に申し立てられる支払督促とは異なります。
このため最初に督促状の送付を受けたときに対応しなかったからといって、即座に強制執行の手続きが取られるというものではありません。しかし、督促には住宅ローン滞納に対応する重要な意味合いがあります。

LP_banner_02

■実はローンは債務者の利益
ご存じ無い方も多いかもしれませんが、住宅ローンを含めて分割払いや期間をあけての一括払いは債務者(お金を払う義務のある人)の利益として法律で認められています。民法136条1項に「期限は、債務者のために定めたものと推定する」という条文があるのです。
したがって債務者は期限が到来するまでは債務を履行する必要はありません。しかし、期限が到来しても返済を行わなければ債務不履行となり、督促を受けることとなるのです。また、債権者は期限の利益を債務者に認める代わりに金利を得ているのです。
また、民法では債務者の行為が一定の事由に該当した場合には債務者は期限の利益を失うこととなり、債権者は期限の到来前であっても債務者に対して債務の履行を請求できるようになるということを137条で認めています。債務者が期限の利益を失うことを「失期」といい、期限の利益を失うことになる事柄を「期限の利益の喪失事由」と呼びます。

■滞納による督促は失期への第一歩
滞納を続けた結果、金融機関から失期した住宅ローンの一括返済を求められても、返済できなければ競売に進むという流れになります。これは法律で定められているように期限の利益を失ってしまったことによるのです。実は督促状の送付は既に失期に向けた動きの始まりとなっているのです。
住宅ローンの金銭消費貸借契約書をよく読んでみましょう。どこかに期限の利益の喪失事由についての記載がされているはずです。そこには期日までに返済が行われなければ期限の利益を失うということの記載が通常されています。

■法律で守られた権利は法律によって失う
住宅ローンの返済を忘れてしまっても、それが住宅ローンの期限の利益の喪失事由に該当していれば、一括返済を求められても文句は言えません。民法でも決められている事項なのです。
しかし、金融機関もそこまでは厳しい対応はしていません。何らかでうっかりして忘れてしまうこともあることは分かっているからです。それで督促状という柔らかい文書を送付して返済を促すのですが、ここで対応を怠ってしまうと金融機関への心証が悪くなり、競売の実行に向けた準備が進められていくことになります。
期限の利益を失う前に、しっかりとした対応を行うようにしましょう。

LP_banner_02

ピックアップ記事

  1. 実は厳しい税金滞納への対応
  2. 不動産の売却に年齢制限はある?
  3. 督促状の納期限とペナルティについて
  4. 不動産売却の時に重要な登記費用について
  5. 不動産の投資で不労所得生活を始めていくために考えること

関連記事

  1. いろいろ

    知らないと大問題!? 農地の競売の必須知識「農地法」

    農地が裁判所の競売にかけられたとき農業法というものが深くかかわってきま…

  2. いろいろ

    企業におけるリスク認知と有用なリスク認知の捉え方

    リスクの認知は国や文化、性別、年齢、職業、専門性などによって様々な捉え…

  3. いろいろ

    老後資金は大丈夫? 住宅ローンは計画的に

    夢のマイホームを手に入れたものの、人生の中でも大きな割合を占める子供た…

  4. いろいろ

    競売物件を購入する際に納付する入札保証金とは

    市場価格と比べ、価格が安く設定されていることで知られている「競売物件」…

  5. いろいろ

    情報の収集力が投資の成果を左右する

    投資に限った話ではありませんが、情報の収集力が成果を左右する局面が多々…

  6. いろいろ

    憧れのマイホーム。住宅ローンと税金と

    マイホームは多くの人が、一生に一度は手に入れたいと思うものです。しかし…

おすすめ記事

おすすめ記事2

特集記事

アーカイブ

  1. 任意売却

    裁判所による競売と税務署による公売との違い
  2. 債務整理

    競売も、民事執行法で扱われる事案の一つ
  3. 債務整理

    競売物件とは?住宅ローンとの関係性
  4. 不動産基礎知識

    住宅ローンの滞納による法的措置とは
  5. 任意売却

    不動産の売却益にかかる税金とは!? 節税する裏技方法ってあるの?
PAGE TOP