遺産相続では金銭や不動産ばかりではなく、被相続人の借金などの債務も相続の対象となります。相続人が被相続人の負っていた借金について過払い請求、任意整理などの債務整理をすることは出来るのでしょうか。
債務などの相続
被相続人の借金などの債務整理の前に、借金などの負債がどのように相続されるのかを知っておく必要があります。
相続の対象となる財産は大きく「積極財産」と「消極財産」に分けられます。「積極財産」とは現金をはじめ預貯金、不動産、株式など資産に該当するものです。一方「消極財産」とは、借金、ローン債務などの負債に該当するものとなります。
相続では遺産分割協議によって相続割合などを自由に決めることが出来ますが、実はこれは積極財産についての話であり、消極財産については法定相続分に応じて分割が行われます。したがって負債を特定の相続人に寄せるというようなことは認められません。
ただし、債権者が同意をすれば相続の割合を変更することも出来なくはないですが、債権者にメリットが無い場合には一般的に同意を得られることは無いと考えられます。
債務整理のうち過払い金請求について
相続を行うために遺産の調査を行っていくうちに遺産が明らかになっていきますが、その過程で利息の過払い金の存在が判明することもあります。
この過払い金については積極財産とされており、遺産分割協議によって特定の相続人に過払い金請求の権利を付与することも可能です。いずれにせよ相続人は債務整理に基づき過払い金請求をすることができますが、請求は相続分についてバラバラに行うよりもひとつにまとめて行った方が効率的だと思われます。
しかし、過払い金請求をするということは単純承認を行ったということになりますので、後で相続放棄や限定承認に変更するというようなことは出来ませんので注意が必要です。
相続人による債務整理
それでは消極財産である借金などについて債務整理を行うことは出来るのでしょうか。相続発生を知ってから3カ月の間に相続放棄、限定承認の手続きを取らなければ自動的に単純承認を行ったことになるため、借金などは法定相続分がそれぞれの相続人の借金ということになります。
相続によって自分自身の借金ということになれば、通常の債務整理と同様に自己破産、民事再生、任意整理などの債務整理をすることが可能となります。
相続では思わぬところからお金の貸し借りの話が出てくることがありますので、できる限り早急に借金の有無、保証人となっている債務などの存否を確認して後々の問題を残さないようにしましょう。