任意売却によってマイホームを売却することを選ぶことのメリットに引越し時期を調整できるという話を聞かれることがあるかと思います。しかし、この引越し時期の調整は売主の都合だけで決めることはできませんので注意が必要です。
競売による立ち退きに基づく引越し
競売によるマイホームの売却では、落札者が決まれば落札者は即座に立ち退きを求めてくるのが通常です。債務者が立ち退きをどれだけ拒んだとしても、落札者に家庭の事情を説明して立ち退きの時期を先に延ばして欲しいと頼んだとしても、落札者が引渡命令の申立てを行い、強制執行の申立てを行ったならば最終的に債務者は引越しをせざるを得ません。
引越し時期の交渉をする余地は基本的にありませんので、競売による売却から逃れられないのであれば、引越し費用を何とか工面しないと路頭に迷うことになりかねません。
任意売却であればどうか?
任意売却であれば、引越し時期について調整ができて、更に引越し費用も貰えるというような話がありますが、これは本当のことなのでしょうか。
結論からいいますと、その可能性はあるが確実なものではないというところです。
引越し時期については、任意売却であれば通常の売買と同じように引き渡しの時期などについて買主と交渉することができます。例えば次の引越し先がみつかるまでですとか、子供の卒業まで待って欲しいといったような事情を買主と協議する余地があります。
しかし、気を付けなければいけないのは、あくまで交渉の余地があるというだけの話であり、確実に希望が通る訳ではありません。買主には買主の都合がありますので、交渉が必要なのです。また、任意売却であれば引越し費用を貰えるという話ですが、これも確実という話ではありません。
あくまで貰える可能性があるということです。債権者が引越し費用の捻出を認めてくれれば債務者の手元に引越費用が帰ってくることになります。
引越しの時期と費用の関係
引越しの費用は売買代金から捻出されるため、債務者が引越し代金を貰えるのは任意売却の決済が完了した後になります。
決済が完了するためには引き渡しが完了していることが必要であるために、必然的に債務者が引っ越した後ということになりますので、事前に引越費用を立て替える形になりますので注意が必要です。
事前に引越し費用が貰える訳ではありません。したがって任意売却で引越しの時期は、極力、引き渡しの時期に近い方が債務者にとっては有利です。引き渡しまでは債務者は所有者としてマイホームに住み続けることが可能ですから、その間に引越費用を貯めておきましょう。
任意売却では、債務者にとって都合の良いことは交渉の成果であることが多いですから、親身に相談に乗ってくれて、交渉力のある任意売却に強い業者を選ぶことが大切です。