債務整理

競売の買受人と原始取得

競売物件には様々な事情の物件があります。よって、必ずしも良い物件ばかりではないのでリサーチが必要になります。今回は、競売物件と原始取得というテーマでみていきましょう。

■原始取得とは?

原始取得を知る前に、まずは所有権の取得方法を説明していきましょう。所有権とはモノを使用・収益・処分する権利で、その取得方法には、承継取得と原始取得があります。

まず、承継取得とは、売買や贈与など人から譲り受けるという方法です。承継取得となると、前主の権利を承継するわけですから、承継人は前主のもとに付着していた権利も取得することになるのが前提です。

承継取得には、承継の仕方が2種類あり、一つ目は一般承継で、包括承継ともいわれ、財産などをまとめて譲り受けますが、二つ目の特定承継は特定の財産だけを譲り受けます。

これに対して原始取得とは、権利を人から譲り受けるのではなく、いきなり自分のモノになる場合をいいます。原始取得で分かりやすいのは、自分で建築物を建築し、取得するという権利の取得法です。

また、時効・遺失物取得・無主物占有・埋蔵物発見というのも原始取得とされます。

例えば、Aが土地の占有を善意・無過失で開始して、10年間の占有により土地を時効取得します。のちの、A自身が悪意になったとしても短期取得時効の対象から外れることはありません。このように、時効という形で原始取得することができるのです。

■原始取得した土地を競売で買い受た場合

さて、前例にあるように、Aが土地を善意・無過失(注意していたにも関わらず知らなかった)で8年間占有していた土地を、Bが競売で競り落とし、2年間占有したとします。その場合は、Bはその土地を時効取得として、主張することができるのでしょうか?

結論は、Bは時効取得を主張できます。

なぜかというと、民法187条に基づき、前の所有者の占有を併せて主張すれば、Bは前の占有者であるAの善意・無過失を引き継ぐことにより、短期取得時効の対象となり、Aの占有8年+Bの占有2年=10年間の占有で、Bはその土地を時効取得することができるということになるのです。

■なぜ主張することができるのか

ここで、民法の187条2項に触れておきましょう。「前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する」と、あります。瑕疵というのは欠陥のことですが、欠陥には悪意・有過失も含まれます。
その瑕疵をも承継するという条文を裏返すと、瑕疵がないことも承継すると理解できます。そのようなことから、例にあるBは、前の占有者の占有を併せて主張することにより、承継できることになるのです。

■まとめ

今回は、競売の買受人と原始取得についてみていきましたが、所有権の取得原因による原始取得では、時効による取得を主張していた場合には、その主張を引き継ぐことができるというようなことが、ご理解いただけたかと思います。

不動産のことに関して疑問やお困りごとがありましたら、お気軽に「株式会社アブローズ」までご連絡ください。

ピックアップ記事

  1. 在宅ローンの老後破産リスクは任意売却で回避しよう
  2. 賃貸経営を行うのに宅建の資格は必要?
  3. 賃貸不動産の経営管理を安易に考えてはいけません!
  4. 後妻の子の相続における取り扱い
  5. 実は厳しい税金滞納への対応

関連記事

  1. 債務整理

    わかりやすく理解する「競売の流れ」とは

    競売のことを説明してみてといわれても、中々、口では説明しづらいですよね…

  2. 債務整理

    競売における配当要求とはどのように知るのか

    競売においては、その配分に応じて債権者にお金を支払うことを配当といいま…

  3. 債務整理

    抵当権があれば支払督促も裁判所の判決も不要

    競売に至るまでには裁判所での様々な手続きが必要になります。裁判による判…

  4. 債務整理

    競売の供託金は何を示しているのか?

    競売に参加し入札をするには、はじめに「供託金」を納める必要があります。…

  5. 債務整理

    競売手続きの流れ

    不動産を市場価格より安く手に入れることができる競売は、その専門性から複…

  6. 債務整理

    債務整理における受任通知が持つ絶大な効果とは?

    多重債務によって、取り立てに苦しんでいる債務者が債務整理を弁護士等に依…

おすすめ記事

おすすめ記事2

特集記事

アーカイブ

  1. 相続

    いざという時のために知っておきたい相続の進め方
  2. 不動産基礎知識

    裁判所における不動産競売の仕組み
  3. いろいろ

    老後資金は大丈夫? 住宅ローンは計画的に
  4. 不動産基礎知識

    住宅ローンの返済が辛いという人の意見
  5. 債務整理

    競売の開札(落札する)結果について紹介
PAGE TOP