相続の発生により被相続人の財産は、複数の相続人がいる場合には、遺産分割協議を経て各相続人に相続されることになります。
現金などの分割がしやすい財産は特に問題にならないのですが、分割が困難な不動産の場合には売却して得たお金を分割する方法などがあります。名義などの扱いはどのようになるのでしょうか。
■相続不動産の名義
相続の対象となった不動産の名義は、何もしなければ被相続人の名義のままとなります。相続を行った場合には相続登記を行わなければいけません。相続登記とは、不動産の所有者が亡くなって被相続人となった場合に、その不動産の被相続人名義の登記を相続人の名義に変更することをいいます。
しかし、この相続登記には特段の期限が設定されてはいないため、相続登記を行わずに放っておいても特段の罰則はありません。また、売却する必要が無ければ当面困ることもありません。だからといって何もしないでおくと、後で困ったことになります。
■相続不動産の名義変更の問題点
相続不動産の名義変更を行わないと、登記の名義は被相続人のままとなります。不動産の所有権を第三者に主張するためには登記が必要となるため、相続登記を行っていないと、正規の所有者としての主張が出来なくなります。また、相続人の権利関係を明確に登記しておかなければ、ただでさえややこしくなりがちな相続における名義の問題が更にややこしいことになる可能性が高くなります。
例えば長く相続登記を行わないでいるうちに、被相続人が死亡してしまうと、そこでも相続が発生することになります。売却のために相続登記を行おうと思ったときには被相続人の所在が分からず、全ての相続人の意見が揃わないという事態も起こりかねません。
■売却を行うためには登記が必要
相続不動産の相続登記の名義を共有で行った場合に、共有持分を売却したいと思う相続人が現れるかもしれません。しかし、共有持分のみを売却するにしても難しいため、①現物分割、②代金分割、③価格賠償のいずれかの方法を取ることになります。
このとき登記名義人全員が売却に合意してれば代金分割の方法を取ることが可能となり、任意売却によって換価することも可能となります。共有者との協議によっても意見がまとまらない場合には、裁判所へ共有物分割訴訟を申し立てることが出来ます。この結果、分割が難しいということになった場合には、裁判所は競売によって相続不動産を換価することで代金分割を行うことになります。
相続において不動産の分割は問題になりやすいので、分割協議の際に後で揉めないようにしっかりと話し合って相続登記を行っておきましょう。