裁判所で行われる不動産の競売では、戸建住宅に限らずマンション、農地、ゴルフ場など様々な種類の不動産が売却されます。また、売却の対象となる権利も完全所有権だけでなく、借地権付建物なども売却の対象です。そのような中で不動産の共有持分も売却の対象となります。共有持分を落札しても完全所有権の物件と異なり自由に使用する事はできないのですが、共有持分を落札した人は果たしてどうするのでしょうか。
■不動産の共有持分
不動産は個別性が強く多様性も持っています。所有形態にも多様性が認められ、完全所有権以外にも地上権、借地権などの権利があり、共有といってひとつの不動産を複数人で所有する事も認められています。例えば土地の登記の単位は一筆ですが、一筆の不動産を複数人で持分を持ち合い共有という形で所有する事ができます。不動産の所有権を共有するという事は、それぞれの共有持分を有する者が不動産全体の所有権の一部を持つ事であり、持分に応じた面積を所有する事とは異なりますので注意が必要です。不動産の所有権の共有持分を持つ場合には不動産全体の処分について他の共有者にも影響を与える行為となるために自由に行う事はできません。しかし、共有持分だけを売却したり、担保権設定をしたりする事は認められています。したがって抵当権が設定された不動産の共有持分は、債権者が抵当権を実行する事によって競売で売却される事になります。
■共有持分の落札
不動産の共有持分は完全所有権と異なり競売で落札しても落札者が自由に使える訳ではありません。そのような不動産に入札をする人はいないのではないかと思うかもしれませんが、不動産ブローカーなどが入札をするケースが多くあります。
不動産ブローカーは落札した共有持分を他の共有者に対して買い取る事を求めたり、他の共有者の持分を売却してもらうように求めたりするなどの交渉をし、その交渉が上手く行かない場合には共有物分割請求制度に基づく裁判による分割によって利益を得ようとするのです。不動産が土地であれば、持分に応じた分割を行うという事も可能なケースがありますが、マンションや戸建住宅ではそれもできません。共有者が買取や売却を拒否しても共有物分割請求制度により、最悪の場合には競売によって共有している不動産全部が売却される事となります。
■競売を回避するために
上記のように安く落札する事によって利益が出るとなれば共有持分であっても不動産ブローカーなどが入札を行います。他の共有者が、このような不動産ブローカーとの交渉や共有物分割請求による競売を回避するためには、任意売却によって競売の対象となっている持分を買い取る事です。他の共有者の持分が競売で売却されるとなったら、早目の対応が肝心です。